Thursday, July 08, 1999

【 '99-08 】 私が分離していく現象

道東を訪れたのはこれで3度目になる。特に今年は1994年に生まれて初めての北海道ツーリング時とルートが似ていた。北海道の東部は酪農が盛んで、緑の牧場が多い。道路はどこまでも真っ直ぐで、本州では見ることのない「バニッシング・ポイント(消失点)」を実感できる。九州しか知らない私にとって、このような欧州的で大陸的な風景は大変新鮮なものだった。

2度、3度と旅しても、この風景が色褪せることはない。退色するのではなく、郷愁の色が濃くなっていくのだ。北海道で生まれた訳でも育った訳でもないのに、「あぁまた帰ってこれた」と思ってしまう。とても不思議な場所なのだ。

屈斜路湖に至る山間道路を走っていると、途中で右手前方に硫黄山が現れる。山肌は黄色と白が混じった色をしていて、つんと鼻を突く匂いが漂っている。懐かしい。5年前、たった一人で旅した時に見た姿がそこにあった。

そんな事を考えていると、私の体は当時の私と同化した。目の前を走っている知人が、たまたまそこに居合わせたライダー、という気がしてくる。どんどん黄色い山に近づいていく。もうすぐ右折できる岐路がある。

ばびゅんっ!

当時の私が当時そうしたように右折して行った。今の私は知人と一緒に直進している。バックミラーで分離した「彼女」を見送る。そして私はまた、前を向いて走り続ける。

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