Tuesday, July 06, 1999

【 '99-10 】 最後のフェリー

近海郵船という船会社がある。東京と道東(釧路)を結ぶ、唯一のフェリーを運行している。船名「サブリナ」と「ブルーゼファー」。

社会人一年目の夏、初めて北海道に行ったときに利用した。それまでは、長距離フェリーなんて、まっぴらごめんだと思っていた。すごく揺れるし居心地も良くないし、と。ところがこの道東行きフェリーに乗ってからは考え方が一変した。スタビライザーが着いているからそんなに揺れない。夜行列車の寝台のような《ツーリストベッド》はなかなか寝心地が良い。カーテンで仕切ってしまえば、ある程度のプライベートスペースを確保出来る。

私は北海道の中でもとりわけ道東が好きだ。でも自宅から自走するにはシンドイし時間がかかり過ぎる。飛行機という手もあるが、なんだかあっさりし過ぎているうえ、金銭面での負担が大きい。それらの問題点を解消してくれるのがフェリーなのである。のんびり過ごす船旅もたまには悪くない。ライダー友達をつくることも可能だ。乗船中の約30時間、フロントにあるモニターで現在位置を知ることも出来る。「今どのへんかな」と、ちょくちょく見に行くのも楽しい。

こんな楽しみ方も、もう出来なくなる。近海郵船は今秋をもって、旅客船の営業を廃止することになった。近年の不況の煽りを受けて、客数が激減したのだろう。行き先が北海道だから冬場の乗客は少ないだろうし、おまけにけっこう立派な船だから、維持するのも大変だ。

「これが最後。」そう思うと、目に映る設備が全てセピア色に見えてくる。まだまだ綺麗で清潔な船内なのに。しっかり記憶に残しておこう。バイク乗りだけでなく、大勢の人々の夢を運んだ船。北海道という北の大地を心に住まわせてしまった船。

確かに前回よりも乗客数が減っている感じだ。「本当に近海郵船は無くなるんだなぁ」という実感がわいてくる。信じられないけれど、信じたくないけれど、それは近い将来の事実だ。あの道東を、またいつか旅することがあるだろう。でも次回は何の手段で行く? 飛行機?レンタルバイク? うーん、今は何も考えたくない。折角の船旅が台無しになってしまいそうだから。

船旅の素晴らしさを教えてくれ、道東への夢を叶えてくれたサブリナとブルーゼファーに今感謝している。本当に有難う! そしてお疲れ様!

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